
中央構造線の写真のコラージュ。 中央構造線はそれ自体が30年中に大型地震の原因となる確率は非常に低いと考えられている。一方で、南海トラフ地震との連動も懸念されており、また、今回取材対象となる根来断層など古くから人が住んでいたにも関わらず、この1,000年ほど大きな地震に見舞われなかった地域もある。中央構造線が活断層である場合、その周期は数千年から数万年程度と考えられており、文献による資料が正しく、なおかつ周期が短い場合は、十分な歪みが蓄積されていると考えられる。
このようにその危険性の判断が重視されがちな中央構造線であるが、実はこのような断層の近くは人が文化や社会を育んできた土地でもある。断層の近くは高低差が生じるため、河川による堆積作用が起こり、平野が形成される。そして、平野中央部は河川の氾濫が起こるため、平野の周縁部=断層の近くが人の居住に適した土地になる。このようなメカニズムにより近畿地方や東海地方西部に平野が形成され、そこに我々のご先祖様が住み着き、文化の礎となった。
このように断層とは人の生活を支えるものでもあり、地震一つでその生活を壊滅させるものでもあ るという二面性を持つ。
人新世における地球はガイアと呼称されることが多いが、人間が見出した断層の二面性は、まさしく神話における地母神としてのガイアに等しい。
そこで、国内最大の規模の断層である中央構造線を作品の対象として選択した。コラージュにあたり、写真をコンピュータ上で透過させ断層を中心に重ね合わせて表示している。このとき、カメラのレンズ=視点が気質的に持っている歪みによって震えるように像が多重化する。これによって以下の要素を視覚化する。
- 地震と断層
- 断層を観察する相関主義的な個々人の視点と事実として存在する断層
- 作品を鑑賞する相関主義的な個々人の視点と事実として存在する作品
- 断層を調査する複数の人間とその調査結果のアッサンブラージュとしての断層の認識 =事実として存在する断層に対して漸近する科学の手法
- これらの要素をメタ的に捉えた鑑賞者と、事実として存在する作品
また、この作品はその指示対象が人間のスケールを超えることがわかると思う。すなわち、作品の指示対象はまだ見ぬ未来か、人間が日本で暮らし始める以前の日本である。タイムマシンが発明されない限り、過去は当然、体験できず、地震による壊滅的な未来についても体験できる公算は低い。しかし我々を確実に取り巻いている世界である。
このような作品/視点はポストモダンの視点では個人の感じる物語として処理される。そこで、あえて近代的な空間であるホワイトキューブで展示することで、近代以降の作品や展示 空間の自立性を排除することを問い、作品/制作という鑑賞対象を問い、鑑賞/観察という第三者的な行為を問う。現代の世界に対する信念を提示する。ここで、相関主義にとらわれない、自然な視点が実行できるのであれば、思考できないものを 思考するポスト思考の時代の思索の在り方/信念の置き方も実現可能であると考える制作・展示を行った。
左から順に
虚構化器官2019-2 MTL根来
2019.6
728mm ☓ 1030mm
アルミ複合版にプリント
虚構化器官2019-2 MTL月出
2019.6
728mm ☓ 1030mm
アルミ複合版にプリント
虚構化器官2019-2 MTL長篠
2019.6
728mm ☓ 1030mm
アルミ複合版にプリント