現代アートの鑑賞において、観者の解釈と作者の意図の透明な関係性がどうしても求められてしまう。そこで製作者と鑑賞者を実際の制作段階で並列化するために設計図のみの作品群を用意する。 設計図としては以下のような作品形態や、作品をめぐる環境、思想・技術的な形態がある。

  • 作品形態(制作の原型となるもの)……エスキース・マケット・絵コンテ
  • 作品をめぐる環境(鑑賞を形作るもの)……遺伝や学習
  • 思想・技術的な形態(社会や文化の起点となるもの)……プロトタイプ

こういった作品は製作者と鑑賞者を「誰もがまだ見ぬ未来に対峙させること」で並列化する。これはスタニスワフ・レムというポーランドの哲学者 / 未来学者 / エッセイスト / SF 作家 / メタフィクション作家 / 科学評論家のメタフィクションの傑作「虚数」(何冊かの実在しない本の序文のみでで きている)や「完全な真空」(何冊かの実在しない本の書評のみでできている)を下敷きにしている。
この展示案の文章全てを次回の展示の予告という体でまとめ、印刷し貼り出す。
細分化され複雑なコンテクストに基づく展示が増えていることによる美術教育の重要性にも依拠する。
しかし、このような文章は作者という一つの観点によって示された展示にするテクストである。作者である私の誤りも含まれているだろう。 何より作者が支配的であることが、このテキストの指示内容と対立する。
そこで展示中も鑑賞者が自由に書き込める作品とする。
これによって、関係性の美学を踏み台とした上で、制作することとプロトタイプのあり方の更新を射程に収める。 正しい/間違い、理解できる/できない、勝ち/負け、といったポストモダンまでの鑑賞方法にとら われず、鑑賞することが鑑賞のフレームを随時つくりだす現代の鑑賞の態度をとられることを期待す る。

虚構化器官2019-1 prototype
2019.6
サイズ可変
インスタレーションと冊子