

僕らはインターネットを通じて誰もが自分を発信し、誰もが 5 分で有名になれる。たくさんの個人の物語は共有されることでやがて空気になり、時に人の意識を縛る。
そんな時代に、今ここでしか伝わることができなかった昔話や伝承は消えていこうとしている。
語り手ではない誰かの物語が失われていこうとしている。文字は遠くに伝わる。空間も時間も超えて。
でも、声はその場限り。文字のように正確でもないし、遠くに伝える力もない。とても不便だけれど、そこには音量があって、アクセントがあって、速さがあって、抑揚があって、間がある。声は語り手によって受け継がれ、繰り返されるごとに新たに発見され、解釈され、作られる。
ここでは物語を伝える声を残します。芸術には言語化できないものをコミュニケーションの場に持ち込む力があって、文字になることでこぼれ落ちてしまったものを保存し、再び共有することができる。
私の物語ではなく、あなたと私が共有するコミュニティとしての空気を。
虚構化器官XII
2016.11
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映像インスタレーション